窓の外から猫の声🐈🐈🐈

2.5次元とか特撮とか。漫画や小説。平野良と望海風斗。

順みつきさんと上原まりさん

お二人は同期で、私が宝塚に通うようになった頃に研9になってらっしゃいました。

今研9というと97期ですかね。永久輝せあさん・城妃美伶さん・海乃美月さん…ですね。

時代が違うので単純に較べられませんが、娘役の上原さんはもちろんトップ娘役でしたし、男役の順さんも何度か大劇場での主演経験がありました。まだバウホールがなかった時代です。あの頃バウホールがあったら既に何度も主演してらしたでしょうね。

既にお二人とも鬼籍に入ってらっしゃいます。亡くなるには早いと思いますが、人間の寿命ばかりはどうにもなりません。


上原さんは決して美人とは言えなかったと思います。今ならトップにはなっていないかもしれません。劇団も最初はそういうつもりだったと聞いています。「小さな花がひらいた」初演の際、この公演のみのヒロインのつもりで柴田先生がおりつ役をつけたとか。それがあまりに評価が高く、いつの間にかトップということに。

「ベルサイユのばら」のマリー・アントワネットを観た時に小学生だった私は「あんまり綺麗じゃないなぁ…」などと失礼な感想を抱いておりましたが、まあ実際あまり美しくは…ない。ただ歌は素晴らしかったし、型芝居のベルばらはともかく舞台を観るうちに上原さんの芝居の上手さは子供にも分かりました。

当時はまだ現在のようにトップコンビがハッキリしていなかったというのもありますが、上原さんは次第にトップから別格へと移行していった方であると思います。私が実際に観劇した作品でもヒロインと呼べるのは「うつしよ紅葉」の濃姫、「ル・ピエロ」のクネコンダ、「宝舞抄」の深雪。後は専科に異動してからのいくつか。花組時代は北原千琴さんが来たことで完全に別格へと。

残酷なようですが、それが自然なことに思えるほど北原千琴さんは美しかった。学年にすればたった3期違いなのですが、北原さんを前にすると上原さんはうんとお姉さんに見えました。

「紅はこべ」で原作にはないキャサリンという役(プリンス・オブ・ウェールズの愛人であり紅はこべの仲間。パーシーを愛している)を作ったのは柴田先生の思いやりではないでしょうか。

美人ではないと申しましたが、「いい女」ではありました。男が惚れるに相応しい女、癒される女、時として魔性の女。それらは全て上原さんの演技力の賜物です。

「花影記」で筑前琵琶を演奏されていました。見事な演奏に客席がポーッとなっていたのを覚えています。


順みつきさんは「バレンシアの熱い花」のラモンや「霧深きエルベのほとり」のカール…と言えばだいたいどんな方か想像がつきますかしら?

ラモンはまさに順さんの当たり役。順さん以上のラモンはいないと断じてもいいと思います。

宝塚がまだ4組だった時代に、唯一全組を経験した方です。雪組→星組→月組→花組の順番でした。そして各組で本公演の主演経験があります。「花吹雪」「美しき青きドナウ」「春愁の記」、花組Wトップと「霧深きエルベのほとり」。

私は「春愁の記」が大好きでした。福永武彦さん原作の「風のかたみ」も全集を買って読みました。映像が残っていないのが残念です。

「柴田先生は順みつきに惚れている」と言われるほど、順さんの為に役を掘り下げて創作していた柴田先生。「たけくらべ」の正吉はある意味真如より美味しかったし、「フィレンツェに燃える」もどっちが主役か分からないレベル。そして「バレンシアの熱い花」。

もちろん順さんの演技力あってのことですが、柴田先生の創作意欲を掻き立てる何かが順さんにあったのは間違いないでしょう。

「たけくらべ」は私は再演(森奈みはるさんの美登利)しか観てはいませんが、確かに正吉はとても良い役に変貌していました。樋口一葉が好きでよく読んでいましたが、正吉なんて全く記憶にない役でしたもの。けれどその正吉を大きな役にしたことで、宝塚の「たけくらべ」は名作となったと思います。

「宝塚にもう一組あれば」と言われていました。順みつきさんをトップにするには組が足りないと。松あきらさんの退団がもう少し早ければ…と思ってしまうのは、私が順さんの方に肩入れしているからでしょうかね。

身体は小さくても、誰よりも熱くエネルギッシュなエンターテイナーでした。


そんなお二人ももうこの世にはいらっしゃいません。私もそれだけ年を取ってしまったのだなあとしみじみ感じます。

お二人の舞台を思い出そうとすると、なんだか遠い夢を見ているような気がしてきます。

いつか今の研9のスターさんを誰かがこんな風に思い起こすのかもしれませんね。あ、私は無理ですよ、たぶんもう死んでますから(笑)。


不二子

×

非ログインユーザーとして返信する