本物か偽物か・前編
ヒーロー・ショーのアクターさんという存在がいます。
テレビに出ているヒーローのスーツアクター、例えば仮面ライダーの高岩成二さんや戦隊だとルパンレッドの浅井宏輔さんパトレン1号の高田将司さん、現行のリュウソウレッドの伊藤茂騎さん等とは違う…遊園地やショッピングモール或いはファイルライブツアー(公式のショー)で演じる方々。
果たして彼らは「偽物」のヒーローなのか?
漫画「トクサツガガガ」でも論じられた問題なのですが、ちょっと難しい。
バッサリと斬ってしまうなら簡単です。そりゃ本物ではないのだから偽物です。しかしそう言い切ってしまうには、特撮ファンにとってヒーロー・ショーは大切な存在過ぎるんです。
ほぼ通年公演で東京ドームシティ・シアターGロッソでは戦隊のヒーロー・ショーが行われています。その時にヒーローのスーツアクターを務めるのはテレビでアクターをやっているのと同じJAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ)所属の人が多い。
言ってみれば「ヒーロー・ショー」の頂点、限りなく本物に近いヒーロー達。実際撮影終了後のアクターさんがそのまま入る場合もあります。ルパンレッドの浅井さんは撮影終わった後Gロッソでルパンレッドやってますし。
こうなると本物か偽物かなんて議論も無意味。ショーだけどテレビの人でもあるわけですから。
そもそも本来の視聴者でありお客さんであるチビッコはそんなことは気にしない。理解している子も中にはいますが(幼少期の私とか。スーツアクターという言葉は当時なかったけれど)、目の前でアクションをするヒーローを見るとそんなことどうでもよくなる。
大人も大人の私ですら興奮しますもん。本物偽物関係なくカッコイイものはカッコイイのです。
客である私たちはそれでいい。しかし当のアクターさんはというと、また別の話。
先述の浅井宏輔さんは元は地方のアクション・チームに所属してショーに出ていたのですが、「どうせやるなら日本一のヒーロー・ショーに出たい」とJAEの門を叩き、やがてレッドを任されるようになりました。
「侍戦隊シンケンジャー」のレッドが初レッドだそうなので、私は観ています。チケットが取れなくてね〜、大変でしたよシンケンの時は。
浅井さんは今度は「本物のヒーローになりたい」と思うようになったそうです。
敵怪人や代役などを経て、遂に浅井さんはテレビで活躍するヒーローのスーツアクターになりました。
浅井さんのファンは多いです。身長は特に高いわけではないですが、スラリとしてスタイル・バランスが実に良い。現在アクション監督に転身した福沢博文さんに似ています。実際福沢さんの代役を務めることが多かったのです。スタイルだけでなくアクションも上手く演技も素晴らしい。
スーツアクターに演技なんて関係あるの? と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん必要です。だって彼らは変身前を演じる俳優さんと同一人物なのですから。
変身前後の役者2人が演技を擦り合わせ作っていくものなのです、ヒーローとは。人それぞれで細かく決める人もいれば、ザックリとだけ決めて後は任せろタイプの人もいます。
ベテランだと変身前俳優さんに「そこからここまで走って来て」と一度走らせただけで動きを把握してしまいます。熟練の職人と言ってもいいですね。
「背中で語る」、普通の俳優でもそれが出来れば一流です。顔の角度をほんの少し変えただけで心情を表現する。それらは熟練のスーツアクターさんには当たり前のこと。指先一つで演技することも必要不可欠な技術です。
それが「本物のヒーロー」を演じるスーツアクターという存在。
では「偽物」とは?
長くなりそうなので記事を分けます。後日また。
不二子