ヴァルモン考
ラクロの「危険な関係」そして宝塚の「仮面のロマネスク」の主人公の一人、ヴァルモン子爵。
ジェラール・フィリップ
ジョン・マルコヴィッチ
高嶺ふぶき
大空祐飛
明日海りお
5人のヴァルモンを観たことがあるということになります。原作は残念ながら未読です。
「危険な関係」のヴァルモンと「仮面のロマネスク」のヴァルモンは同じではありません。
映画のヴァルモンはトゥールベル夫人への真実の愛に目覚め、ダンスニーとの決闘で死にますが、宝塚のヴァルモンはメルトゥイユ夫人をひたすら愛し決闘では死にません。その後戦いに身を投じ死ぬであろうことは明らかですが。
もしトゥールベル夫人を真に愛するヴァルモンにするなら、トゥールベル夫人を娘役トップが演じたことでしょう。メルトゥイユは別格娘役かひょっとしたら男役がやったかもしれない。
宝塚版の脚本・演出は柴田先生ですが、彼はそうはしなかった。
メルトゥイユ夫人との愛しあいながらの切ない別れこそ、宝塚に相応しいと彼は考えた。
この作品の初演は高嶺ふぶきさんのサヨナラ公演、退団に相応しい幕切れを…と思ったのでしょうか。
相手役の花總まりさんにはトゥールベルよりメルトゥイユの方が合います。娘役2番手といっていい星奈優里さんにはメルトゥイユよりトゥールベルが似合います。適材適所。
最後の「2人だけの舞踏会」は名シーンだと思います。
高嶺さんの色気がヴァルモンという役にピッタリでした。色気だけでなくちょっとした遊び心があるのが、恋を弄ぶヴァルモンらしかったと思いました。
大空祐飛さんのヴァルモンは美しくはありますが、遊びで恋をしなさそうに見えました。顔の表情が無さ過ぎるというか…。
明日海さんのヴァルモン、文句の付けようがない。強いて言うならメルトゥイユ夫人とのバランスが良くないくらいでしょうか。
映画は映画で面白いんですよ。ジェラール・フィリップ版は舞台を(当時の)現代に移していますが、ジェラール・フィリップの美貌は一見の価値有り。
マルコヴィッチはヴァルモンというにはちょっと…ですが、私は割と好きです。グレン・クローズのメルトゥイユがなかなかの迫力。ダンスニーをキアヌ・リーヴスが演じています。まだ初々しい感じが残っているキアヌも必見。
相手は違えど、どちらのヴァルモンも真の愛には一途です。それがただの色男ではない魅力なのでしょう。
宝塚版の方が切なさ成分が強めで、私個人の好みを言えば宝塚版がより好きですかね〜。
またいつか誰かで再演されるかもしれませんね。楽しみに待っています。
法院長の部下A・不二子