20世紀号に乗って・5
真彩希帆という娘役は怖ろしいまでに才能に溢れている……なんてことはずっと前から分かっていたはずなのです。しかし改めて感じます、彼女の天井も何処まで高いのか見当がつかない。
YouTubeでBW版の映像を見た時に「真彩さんならこんな感じかなぁ〜」と想像していましたが、予想以上の出来栄え。
オスカー達の回想の中の冴えない時代のリリーからもう既に面白い。真彩さんもまた絶妙な間の良さ。「スタンバイ」の一言だけで何故あんなに笑えるのか。
常々「真彩さんは天才なのでは?」と疑っていましたが、やっぱり天才ですよね。紛れもなく。悲劇も喜劇もイケる、望海さんと真彩さんのコンビに怖いものはない…と言いたいところだけど、弱点はありますね。2人共スタイル・バランスはよろしくないので宝塚演目でいうとベルばらとかエリザベートなんかは似合わない。でも良いの、やらなきゃいいだけだから。
ダサダサ時代の真彩さんも可愛いんですよ。イメルダ役のあゆみお姉様こと沙月愛奈さんもめちゃくちゃ歌が下手ってわけじゃない。超ダンサーだから下手でも許されるんですが、実は慣れてないだけで音痴ではない。でも真彩さんが音程の訂正をすると、その瞬間に他の全てが音痴に感じる。そりゃオスカーもピンと来ます。
金の卵リリーを公私にわたって愛するオスカー、でも舞台のリリーと本名の◯◯(何て発音してるのか観劇2回の空耳クイーンには聞き取れませんでした)、どちらを愛しているのかオスカーにも愛されるリリーにも分からなくなっていたのかなぁと思いました。
オスカーはそれを気にしないけどリリーは気にしていたのかもね。20世紀号の中で肩に回されたオスカーの手に触れてウットリするリリーは何とも可愛らしくて。「ああ、リリーは今もオスカーを愛しているんだな」とその行為と表情だけで充分伝わってきました。
でも口を開くと喧嘩になってしまう…男と女の関係は簡単ではありませんねえ。
真彩さんはとてもチャーミングだけど絶世の美女ではない。それなのにハリウッドの大スターの役に説得力がある。カメラマンに一々ポーズを変えるの可笑しいし、魅惑的。一緒にポーズしている三流俳優ブルースも可愛い。
ブルース以前にも恋人は何人もいたようですが、ブルースとのシーンを見る限り本気の恋というより恋人ごっこだったのではないかと。私生活でも女優を演じていたのかな?
オスカーと遂に結婚するけれど、きっと何度もすさまじい喧嘩をして、離婚と再婚を繰り返すんだろうなと思います。あの2人頭に血が昇りやすいんだもの。
この役を今演じることが出来て良かったです。まさに「今」だと思います。クリスティーヌを経た今だからこそ最高の「リリー・ガーランド」が誕生したのですよ。
リリーに花束を投げたい女S・不二子